1 海外の銀行のなかでもとりわけ米国の銀行は、預金の取り戻しを求められて、最終的に預金の解約に応じる場合には、送金手段として小切手を使用することがほとんどのようです。
銀行間送金を求めても、返金方法は小切手だけに限定されると明言する銀行もあります。
小切手の方が送金額にかかわらず、費用が安価な郵便代だけで済むうえ、小切手の取り立てには時間がかかるので、それだけ預金を保有できる期間が長くなるメリットを認識しているからではないでしょうか。
2 相続により、又は相続とは関係なく口座名義人が何らかの事情で、米国など海外の銀行に預金(当然に外貨預金です)の解約を申し入れて取り戻すには、今日ではインターネット(オンライン)バンキングを利用できれば、その活用が最も確実に早く取り戻す方法となります。
しかし、そもそもはじめからインターネットバンキングを利用できない外国の銀行に預金する場合もあるでしょう。
また、インターネットバンキングは当初は作動していたところが、操作が複雑であったり、暗証番号を間違えて入力したことなどが原因となったりして、ロックしてしまい、その後はインターネットバンキングを使えなくなったというケースもあることでしょう。
3 経緯・事情は様々な場合がありえますが、手紙や電話等のアナログ的な手段で解約しなければならない場合には、一般的に時間も費用も手間も相当かかります。
首尾良くことがすすんで、いよいよ銀行側も返金するところまでこぎ着けて、最終的に預金が戻ってくるという段階になっても、まだ気は抜けません。
4 日本の銀行に直接送金してもらえる場合は、送金完了により一件落着となります。
しかし、送金手段が小切手の場合には、まだその取り立てという作業が残っています。
まず、受け取った小切手がどのような性質のものであるかにより、現金化の手間も時間も異なるでしょう。
5 預金の払い戻しを米国の銀行が小切手により行う場合には、通常、銀行自身が小切手の作成者になり、払い戻しを受ける者(預金者やその相続人)が受取人兼指図人とされる小切手が発行され、預金の受取人宛に郵送されてきます。
小切手上に「CASHIER’S CHECK(CHEQUE)」とか、これに似たような文言が記載されていれば、銀行自身が送金手段として作成した小切手である可能性が高いでしょう。
6 その小切手を現金化するには自分の口座がある日本の銀行に取り立てを依頼することが預金取り戻しの最終的なステップとなります。
外貨預金を取り扱っている銀行でも、米国の銀行が発行した英文で作成された小切手については取り扱っていないところがありますので、無駄な時間・手間を費やさないためにも、事前の確認は必ずしておきましょう。
以前あるインターネット上のサイトに、ある大手の都市銀行が外国銀行が振り出した小切手を買い取る場合と取り立てる場合の両方があるような記事を見かけたことがありましたが、現在(2017年7月時点)では、買い取りをしていないということで、取り立てのみを受け付けるとのことでした。
自分の口座のある銀行に取り立てを依頼することになりますが、海外の銀行が発行した英文で作成された小切手の取り立てを業務として行っていない銀行である場合には、大手の都市銀行など英文小切手の取り立てを受け付けてくれる銀行に口座を開設する必要があります。
大手の都市銀行でもすべての支店で外国銀行が発行する小切手を取り扱っているわけではありませんので、事前に電話等で取り扱いの有無を確認しなければなりません。その確認の仕方も、明確な問い合わせをしないと、間違えた回答を得てしまう場合があり得ますので、詳細に念を押しながら確認する必要があります。
その際に、応対に出た銀行員の名前を伺い、メモしておくべきでしょう。取り立てを依頼しに銀行に出向いたときに、何らかの話の行き違いのあったことが判明した場合には、事前に問い合わせしたときに対応してくれた銀行員の名前を出す必要に迫られることもあるからです。
7 小切手の取り立てに必要な書類等は通常以下のとおりですが、取り扱い銀行により異なり得ますので、事前に問い合わせしておきましょう。
・小切手原本
・口座の通帳原本:取り立てを依頼する銀行に自分の口座があることが必要です。
・上記口座の銀行届出印
・身分証明書:運転免許証又はパスポート
・マイナンバーカード又はマイナンバーを通知してきた書類の原本
・取り立て手数料:銀行・金融機関により異なりますが、2000円~5000円ほどがかかるようです。
マイナンバーカードが必要ではない場合もあるようなので、事前に取り立てを依頼する銀行支店に確認をしておく必要があります。
8 取り立ての受付が無事に終了したら、後は入金を待つだけとなります。
入金されるまでには通常1ヶ月ほどかかります。取り立てが完了して自分の日本の口座に入金されるまでに小切手を発行した海外の銀行が破綻しないことを祈るだけですね。